日記

　店の引き渡しをした。
　業者による掃除は終わっている。それに先だって店を空にしてあるから何もすることはない、と思っていたのだが、念のために、と早めに行ったところ、郵便受けは残ってるわ、閉店告知の紙は貼ったままだわ、本棚を固定してあったモルタルアンカーは刺さったままだわ、とやらなきゃいけないことが次々に。そんなこともあるかもしれない、と道具を色々持ってったんだけど、大活躍である。
　面倒くさそう、と思ったが、モルタルアンカーはラジオペンチでつかんで小刻みに揺らしながらゆっくり引っ張ったら抜けた。抜けたはいいが、その穴が気になって、慌ててパテを買って来て埋めた。今度こそ、OK.
　実は、片づけをしてる最中に壁に穴をあけてしまった。いろんな備品を床に並べて、これはリサイクルショップ、これは家で使う、これは捨てる、とやってる最中に躓いて電気ポットを蹴とばしてしまったのである。ここまで慎重にやってきたのに。知らんぷりできる大きさではないので、正直に申告。修理代金が敷金の範囲で収まりますように…。
　エアコンは動いてるよね、と言われて確認しようとしたが、去年の秋にコンセントを抜いたきりである。リモコンの電池も切れててちょっと慌てたが、シーリングライトのリモコンがあったのでそれから電池を抜いて確認。しかも、その電池は俺が買った充電池なので、確認が終わったところで持って帰ってきた。

　これで一安心。
　経済的にも安心だが、「俺が責任を持たなきゃいけない場所」でなくなったのが大きい。
　店を始めてすぐ地震があって、大した震度ではなかったので何も起きなかったが、会社勤めだったら何かあったとしても会社の指示の範囲で動けばいいのに、自分の店となると、何かあったかどうかの確認からその対処まで全部自分でやらなきゃいけないのか、と思ったのを覚えている。
　今回の豪雨がそれに近い。店の引き渡しと重なってちょっとパニクりかけたが、自分の家と、店と、トランクルームの三か所すべてで何かが起こったら、と思うとぞっとする。事件発生はトランクルームだけだったし、それだって在庫全滅だから悩まなくて済んだ。捨てる作業だけで終わったのは不幸中の幸い、という気がする。

　というわけで、リアル店舗消滅、である。

日記

　浸水したトランクルームを片付けてきた。

　市が用意した災害ゴミの仮置き場、ウィークデイの間は７か所あったんだが、あれよあれよという間に満杯になり、２か所にまで減っている。間に合わなかったらどうしよう、と思っていたが、よく見たら「事業ゴミ不可」って書いてある。えー、あれ全部、自分で始末しなきゃいけないの?! ってうんざりしながら行ったのだが、トランクルームの業者がゴミ捨て場を用意してくれて（工事現場とかにある、トラックの荷台みたいなあれ）、そこに放り込むだけで済んだ。
　愛書家が聞いたら目をむくかもしれないが、大半の本は（保護用のクッション材なんかをかました上で）ビニール紐で縛ってある。これは、中の本が水を吸って膨らんでいるためキツキツになっており、紐と本の間に指が入らない。せっかく紐があるのに両腕で一個ずつ抱えるしかない。
　段ボール箱に入ってる方も、箱自体が水を吸ってやわらかくなってるから持ち上げると中の本を支えられず、出して 30 冊くらいずつ抱えていくことになる。
　棚は、カビが生えているのは予想通りだが、壊れていた。係の人が言うには、水が入ったときに持ち上がって落下したのかもしれない、とのこと。
　こわれていないように見えた棚を移動しようとして、上をつかんで、下を足で支えようとしたらメキっと長靴が中にめり込んでしまった。

　ダメになった本の分野は記憶の通りで大方合っていたが、18,000 円の値をつけてあった全集が含まれているのはちとショックである。

日記

　週末は、浸水した本や棚をトランクルームから引き揚げる作業。もう一週間も経ってるから、いくらか乾いてて砂ぼこり立ちまくりだろう、と、目を守るべく、百均で花粉症用の眼鏡を買ってみた。
　もちろん、110 円でどこまで、という気はしているので、時間に余裕があれば DIY ショップで作業用のを探してみるつもりではあるのだが。
　昔、スキー用にレンズの周囲を革で覆ったのを持ってたんだけど、捨てちゃったんだよな。

日記

　どうやら在庫は家に入りそう、ということがわかって一安心。
　車と部屋を何往復もして運び込みながら、次の保管場所が決まったら逆方向の移動を繰り返すのか、とうんざり。

日記

　昨日、店を施錠したときに、まだテープの痕が残ってることに気づいて追加で除去作業。

　店をやってるみんな、ガラスに何かを貼るときには以下のことに注意だ。
・メンディングテープで貼るな。はがれないぞ。
・掲示期間が終わったら直ちに痕も処置しろ。
・シールはがしは文具店などで買え。百均のは弱いぞ。

　自分の家に置けるかどうか怪しい、とはいうもののほかに置く場所があるわけではないので棚を車に積み込んで持って帰ることにする。それが二つあるから本がほとんど積めなくて、きちんと終わるのかまた不安になる。

日記

　道の両側には泥水の跡で床上浸水とわかる家がいくつもあって、頬をひきつらせながら店に行く。
　旭川ががんばってくれて大町は平穏無事。ここが浸水でもしてたら完全に詰むところだったので一安心（天災だから、と融通はきかせてもらえたかもしれないが）。
　業者による清掃が土曜日だから、金曜日までにすべて家に運び込まなければならない。また、粗大でないゴミの始末も始めなければならない。窓ガラスのテープ痕もまだ２面残っている。大忙しだった。
　で、一息ついたところで、毎日使っているから意識に上らなかった机・椅子・脇机が残っていることに気づく。そんなものを置くスペースはないので、拭いてリサイクルショップに持ちこむ。机は古本市などのイベントで使いたかったんだが、どうしようもない。
　そしたら、先週、その店に買い取ってもらった本棚が、ほぼ定価で売られているのを見つけて驚く。何かと勘違いしてないだろうか。
　帰ったらトランクルームから電話。復旧不可能なので閉鎖する、とのこと。それは、最初に連絡したときに匂わされてたので、やっぱりですか、としか思わなかったが、荷物を今月中に引き揚げろ、と言われてギエーっとなる。なったけど、選別も洗浄も必要なくて右から左で捨てればいいだけ、ということでスケジュール調整。

日記

　家の周囲は 5cm くらい冠水してたが、水が引いて車を出せるようにはなった。だが、明田地下道は完全に水没、土手町（川反の背中）では護岸が崩落した、という話なので、外には出ないことにする。
　店の方も心配だが、旭川は持ちこたえているようなので、県の監視カメラを見ながら、トランクルーム問題の善後策を検討。
　今、店に残ってる、トランクルームに運び込むつもりだった在庫は自分の家に置くしかないので、部屋を片付けまくる。本はなんとかなりそうだが、本棚を置く場所があるかどうかは大いに怪しい。
　片づけながら、行方不明になっていた本や DVD を発掘できてちょっとうれしい。

日記

　雨は降り続いているが、豪雨という感じは全くない。確かに、橋から川を見ると結構な水位ではあるのだが、見たことない、とかいう感じでもないので、そのまま店へ。
　大物はもうなくなっている。後は、残った本や本棚をトランクルームに運び込めばおしまい。区画を追加する契約が明日なので、搬入はそのときでいい。窓ガラスに残っているセロハンテープの痕を、ドライヤーとシールはがしで除去する。５面あるうちの３面が完了したところで（２時間かかった）今日の作業はおしまい。
　15:00 ころに家に帰ってみると、近所の川から水があふれている。17 年の豪雨では、自分の家は大丈夫だったが、そこからバス通りに出るまでの道が冠水して車が出せない、という状況になったので、今回はどうだろう、とネットで情報収集。そしたら、明田地下道が通行止めになってることがわかり、これはやばいかもしれん、車を避難させよう、と外に出たらすでに道路は冠水していて手遅れ。
　これでは契約はムリだろう、とトランクルームの業者に電話してみたが、連絡が取れない。２時間くらいかけてリトライしたところ、やっとつながったが、なんとトランクルームが床上浸水し、荷物も水に浸かったという。
　本の整理は店を明け渡した後、と思っていたからごく一部しか本棚に納めておらず、箱をボンボンと詰み重ねてあるだけ。ということは、例え水位が数cmであっても、水は全体にしみている、と考えざるを得ない。岩波を中心とする新書（目録販売してたやつ）と、「言語」「日本語学」全冊、文化創造館で秋くらいに並べようと思って寄せてあった本などがロスト。約1,000冊。

日記

　休みを取って、粗大ごみの処理。御所野と店を４往復して、14:00 頃にすべて搬出完了。
　さて、次は何すっかな、と思ってたら雨が振り始める。丸一日かかることも覚悟してたので、スムーズな進捗に気をよくして、今日の作業はおしまい、ということにし、ビールを買って帰る。

日記

　郵便局に転送依頼を出してきた。７年前に転勤から戻ってきたときに比べてはるかに面倒くさくなってるのは時代だからいいとして、相変わらず記入欄が小さい。今度の新拠点はフルパスで書くとかなり長いので、俺の悪筆でこれは読みとってもらえるんだろうか、って感じになった。
　他のところでオンラインで届を出したときは入力欄に入りきらなくて途中で切れてる。大丈夫かな。