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文にあたる [本・雑誌あれこれ]

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(牟田 都子/亜紀書房)

 先日、読書実況で取り上げ、その後、実況録の公開は終了したが、もったいないので再構成して感想文の形にする。
 読書実況録を時限公開にするのは、「実況」なので、その時々で思ったことを、全体を見ずに逐次書くことになるからである。フィクションにおける重要な伏線など、読み通した後に書くんだったら触れずにおくであろう内容まで書いてしまう危険がある。後で編集すればいいじゃん、って話もあるだろうが、それをしたら「実況」ではない、ということでこの形にしている。


 もし(強引ながら)まとめるとすると、「プロとは」ってことになるのではないだろうか。
 著者が「プロです」などと威張っているわけではないが、やはり色々なところににじみ出てくるし、読者が考える材料もたくさんある。

「校正家は物知り」というのは「翻訳家は辞書を引かない」と同じ勘違い。プロだからって必要な知識をすべて記憶しているわけではない。プロは、自明と思われることも確認するし調べまくる。プロらしさを挙げるとするなら、そのための手段、第一歩のとっかかりを、プロでない人よりは多く持っている、というところだろう。
 あと、長い期間にわたってがっつりやっていることによってはぐくまれる「勘」。
 15p にもわたる函数表の校正で、「ゆるやかなカーヴをえがいて上下する曲線を描」いていた数字の列があるところで「そこだけとぎれる」と感じられ、それで間違いを見つけた、というエピソードがあるのだが、これだよね。
 校正に限らず、「疑う力」って必要なのではないか、と思う。「本当に?」っていう感覚。記憶に頼る、っていうのはその正反対だよね、きっと。
 具体的な作業については何度か言及があるが、「目を瞑っては」の、物語の主人公が東京を走り回る話で、道路地図をコピーしてマーカーでその足取りを確認して、OK とゲラを戻したら、「ここは、土日は一方通行で通れない」と返された話は、申し訳ないが、笑ってしまった。

 なにかのプロと、そうでない人に勧めたい。

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