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ユートピアとしての本屋 [本・雑誌あれこれ]

『ユートピアとしての本屋 暗闇のなかの確かな場所」(関口 竜平/大月書店)』
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 メインのテーマは“safer space”あたりかと思うのだが、「まもなく業務縮小する書店主」としては、営業面の話が気になって。

「自分が否定されたわけではない(とはいえ……)」という節がある。気合を入れたフェア、思いを込めた選書が、さっぱりな結果に終わった場合、それは「自分が否定されたこと」と感じる。イコールではない、と繰り返し書かれているが、残念ながらイコールである。個人商店、個人事業をやっている場合、そこの「お手当」が実はものすごく重要。あるいは、事業計画よりも。

「企業は、社長の器を超えて大きくなることはない」と言われるが、書店の棚も一緒で、「店主のおすすめ」だけで構成するとものすごく狭くなる。だから、「おすすめ」の範囲を広げる努力をすると同時に、そこに接している領域から「おすすめに近い本」を選び出せるような感覚を磨く努力をする(本書でも、「置くべきでない本」を置いてしまった例の告白がある)。そういう点で、「(本屋に置いてある本の範囲は)本屋の思想や価値観を中心としたぼんやりとした円」という表現は適切だと思う。
 そこに続く、「『どんな本を置いてるんですか?』にはうまく答えられない本屋でも、『どんな本は置いてないんですか?』という質問にはすらすらと答えてしまう」というのもまた、あらゆる領域に通用する真実ではあるまいか。

「本屋論」でおさめるにはもったいたいないほど範囲が広い。「どういうこと?」「自分はどう?」というフックも多い本だが、巻末に参考文献一覧はあるし、引用もきちんとされていて、読みづらさはない。
 俺もあれこれ考えてしまい、もっと長々と書いたのだが、自分(の店)の話ばっかりになったので割愛する。
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